棕櫚箒(シュロほうき)について基本的なこと


【限定販売のお知らせ(不定期・数か月に1回程度)】当店の棕櫚箒はご注文を受けてから製作する受注製作・予約制です。現在お問い合わせを多数いただいているため、お届けまで1年余りお待たせしている状況ですが、数か月に1回程度、予約なしでご注文いただける在庫のある棕櫚箒を販売しています。不定期開催で、在庫のある時だけの販売です。少数限定で棕櫚箒の種類は毎回変わります。時々覗いてみていただければと思います。
「在庫のある棕櫚箒/商品一覧」ページはこちらです(各少数本・限定)。
 

棕櫚箒(シュロほうき)について基本的なこと

受注製作・予約制「 棕櫚箒製作舎 」の、シュロほうきについて

棕櫚箒とはどんなものなのか、基本的なことから、こちらのページで詳しくご紹介します。(和歌山県郷土伝統工芸品指定 棕櫚箒)

1.当店の棕櫚箒は3種類あり、修理しながら長く使う「本鬼毛箒」と「鬼毛箒(タイシ箒)」、原則修理しないで使い切る「皮箒」があります
2.棕櫚箒は畳・フローリングに適した室内用の座敷箒です
3.棕櫚箒をサイズで分けると3種類「長柄箒・片手箒・小箒」
4.棕櫚箒の名前・規格・サイズ「〇〇玉の棕櫚箒」とは
5.棕櫚箒の魅力
6.棕櫚箒の耐久年数
7.当店の棕櫚箒に使用している、棕櫚以外の素材(柄・糸・銅線・鋲・釘・竹・藁など)について
8.棕櫚箒の製造工程 棕櫚箒ができるまで
9.番外編:現在の棕櫚箒を取り巻く状況について


1.当店の棕櫚箒は3種類あり、修理しながら長く使う「本鬼毛箒」と「鬼毛箒(タイシ箒)」、原則修理しないで使い切る「皮箒」があります

本鬼毛箒と皮箒の比較写真
棕櫚箒(しゅろほうき)は名前のとおり、棕櫚の木の幹の皮を穂先の素材に使った和箒です。
日本で古くから使われてきた和箒のひとつで、いつの時代から作られたのかはっきりしませんが、江戸時代後期1800年代になって登場したホウキモロコシ(イネ科/一年草)の箒よりも歴史はずっと古く、江戸時代以前から使われていたと考えられています(→江戸時代の絵に描かれている棕櫚箒についてはブログでご紹介していきます)。かつては京都を中心に西日本各地に職人がおり、地方ごと、職人ごとに特色のある形の棕櫚箒が生まれました。

棕櫚の木画像
棕櫚箒は鬼毛箒・皮箒も、いずれも原料は棕櫚の木の皮ですが、元々の皮自体の繊維の太さや質、使用する部位、製法や耐久性、掃き心地が異なります。
また、作りを細かく見ると、鬼毛箒は箒穂先が、根元からすべて1本1本にバラバラになった棕櫚繊維を束ねてできています。

原料の棕櫚皮の繊維は、数ある天然繊維の中でもすぐれた性質があり、細く弾力があってしなやかで、耐久力・荷重力が強く、水の中でも腐りにくく、古くから魚網や船具、運搬・荷造り用、建築用として、縄やロープや網などに盛んに利用されました。棕櫚箒や棕櫚タワシもこの棕櫚の特性を生かして作られており、自然素材でありながら丈夫で長持ちします。(原料の棕櫚の皮や繊維は、国内産では棕櫚箒の原料に使える上質なものは手に入らず、残念ながらここ50年余りは中国からの輸入原料に頼っています)



本鬼毛箒(修理しながら長く使える棕櫚箒)

本鬼毛箒画像 本鬼毛箒は、棕櫚箒の最上質品として知られてきた棕櫚繊維箒で、他の和箒と比較しても最も耐久性の高い箒です。(「本鬼毛箒」の読み方は「ほんおにけほうき」「ほんおにげぼうき」「ほんおにけぼうき」など)

当店では、現在一般に流通している「鬼毛箒(タイシ箒)」よりも、製作に手間はかかるけれどはるかに高品質だった古来からの「本物の鬼毛箒作り=本鬼毛箒」に挑戦しています。本鬼毛箒はここ数十年は、原料が入手できず滅多に作られなくなり、将来も製作不可能といわれていた箒で、今となっては他に製造している所はありません。

棕櫚皮や、棕櫚皮をほぐした未選別の繊維(=「タイシ」といいます)から1本ずつ手で抜き集めた鬼毛(=本鬼毛・タチケ)という名の特別耐久性があり(鬼毛という繊維は数十年長持ちします)太く美しい棕櫚繊維を主原料にした箒が本鬼毛箒です。

【本鬼毛箒は修理をしながら長年使うことができる】
昔から「一生に3本あれば足りる」といわれるほど長持ちし、もし多少傷んでも修理をしながら長く愛用できる棕櫚箒が本鬼毛箒です。棕櫚箒の修理をしながら長く使いたいとお考えの場合は「本鬼毛箒」または、本鬼毛箒に次ぐ耐久性・性能といわれる「鬼毛箒(タイシ箒)」をお求めください。
本鬼毛箒は最も耐久年数が長いといわれる棕櫚箒ですが、本鬼毛箒や鬼毛箒(タイシ箒)に使う原料繊維自体に数十年の耐久性があり、修理の際も穂先の棕櫚繊維はそのまま再利用できます。「棕櫚箒は壊れても修理して何十年も使える」と聞いたことがあるかもしれませんが、正確には「棕櫚箒の中でも本鬼毛箒と鬼毛箒(タイシ箒)」が修理して長く使い続けられる棕櫚箒です。

畳やフローリングに適した室内箒(座敷箒)で、昔から特に「畳には鬼毛箒(本鬼毛箒)」といわれ、使い続けると畳が長持ちして艶が出るといわれてきました。柔らかいながらもコシのある掃き心地で、畳の目に沿って掃くと心地よい掃き音がします。綿埃や髪の毛も良く集めます。
本鬼毛箒について詳しくはこちらの別ページ「「鬼毛箒」 - 鬼毛箒・本鬼毛箒・総本鬼毛箒の違い 」をご覧ください。


鬼毛箒(タイシ箒)(「本鬼毛箒」に次ぐ性能・品質があり、修理しながら長く使える棕櫚箒)

鬼毛箒(タイシ箒)画像 2017年以降は従来通りの「本鬼毛箒」「皮箒」に加えて、「鬼毛箒(タイシ箒)」の製作も承ります。ここ数年の間に本鬼毛箒を作る職人は他にいなくなってしまいましたが、上質な「鬼毛箒(タイシ箒)」を製造する職人も高齢となり減ってしまい、和歌山では当店以外に作っているのは現在一人で、計2人だけとなっています。

【本鬼毛箒と鬼毛箒(タイシ箒)の違い】

「鬼毛箒(タイシ箒)」はここ数十年間は一般的に「鬼毛箒」の名で作られ流通している箒で、2012年以降に当店で製作してまいりました「本鬼毛箒」とは品質・製法が異なります。→詳しくはこちらの「鬼毛箒-鬼毛箒・本鬼毛箒・総本鬼毛箒の違い」についてのページをご覧ください。

[主原料の違い]

どちらも棕櫚の繊維を束ねた箒で、名前も見た目も似ているので、特に通信販売では違いが分かりにくいかもしれないのですが、本鬼毛箒と鬼毛箒の最大の違いは主原料で、主原料の棕櫚繊維の違いによって耐久性・掃き心地・見た目の美しさなどが異なります。 本鬼毛箒の主原料は「太く硬い上質な棕櫚繊維から、1本ずつ手で選別し抜き集めた本物の鬼毛(本鬼毛・タチケ)」です。それに対して「鬼毛箒(タイシ箒)」の主原料は「100%未選別の太く硬い上質な棕櫚繊維」(未選別の棕櫚繊維のことをタイシという)です。選別していない上質な棕櫚繊維(タイシ)にも本物の鬼毛がいくらか含まれますが、その他の棕櫚繊維や多少短い繊維も多く含まれています。「鬼毛箒(タイシ箒)」は本鬼毛箒と異なり、繊維を1本ずつ選別する工程がありませんので、そのぶん製作時間は短くなります。上質な「鬼毛箒(タイシ箒)」は本鬼毛箒に次いで掃きやすく長持ちするよい箒といわれています。 同量の棕櫚繊維・鬼毛の比較 同量の棕櫚繊維・鬼毛の比較「同量の棕櫚繊維・鬼毛の比較画像」→上記2枚の比較画像について、詳しくはブログをお読みください(2017年1月23日の記事です)

[耐久性の違い]

耐久性は、本鬼毛箒は昔から「一生に3本あれば足りる」といわれ20年以上(修理をすればそれ以上)といわれており、「鬼毛箒(タイシ箒)」は原料繊維の違いから本鬼毛箒ほどの耐久年数はないとされ15年程〜長くても20年程ではないかといわれています(箒の耐久年数は、ご使用状況や保管状況により大きく変わります)。

[使用感・見た目の美しさの違い]

掃き心地は、コシ・弾力のある本物の鬼毛(本鬼毛・タイシ)が主原料の本鬼毛箒の方が穂先にコシやバネのような弾力があり、「鬼毛箒(タイシ箒)」は本鬼毛箒ほどではありませんが「皮箒」と比べると穂先にコシがあり、いずれも掃きやすく使いやすい箒です。見た目の美しさは、双方を並べて見比べると、さすがに手選別の本物の鬼毛(本鬼毛・タイシ)が主原料の本鬼毛箒の方が美しく、穂先が綺麗に整っています。

[修理して長く使うことができます]

「本鬼毛箒」も「鬼毛箒(タイシ箒)」も修理可能です。もし多少傷んでも修理をして、穂先がすり減るまで長く使うことができます。

[棕櫚鬼毛箒(タイシ箒)の製法]

棕櫚鬼毛箒(タイシ箒)の作り方・製作過程は、「棕櫚箒の製造工程|棕櫚箒ができるまで」ページをご参照ください。
 


皮箒(原則修理しないで使い切る棕櫚箒)

皮箒画像 昔から広く一般家庭の室内箒(座敷箒)として畳やフローリングに使われてきたのが棕櫚の「皮箒」です。(「皮箒」の読み方は「かわほうき」または「かわぼうき」)

棕櫚の木の幹から1枚ずつ剥いた棕櫚皮をそのまま丸めて束ねて、箒の穂先になるところだけをほぐすと棕櫚「皮箒」になります。素朴で簡単な加工方法である皮箒は、いま作られている様々な棕櫚箒の元祖といわれ、現代の皮箒と似たような箒が江戸時代以前の古くから作られ、使われてきたと考えられています。

選りすぐられた質の高い棕櫚皮だけを幾層にも厚く重ねて作った皮箒は10年以上使えるといわれる品質があり、その他多くの皮箒とは耐久性や掃き心地のよさ・見た目の美しさは別格です。当店では品質「特選」の皮箒がそれです。

皮箒も畳やフローリングに適した室内箒(座敷箒)です。幾層にも束ねた上質な棕櫚皮をほぐした穂先は、鬼毛箒よりも細く柔らかい棕櫚繊維の分厚い毛束になっています。掃き心地は柔らかく、なでるように床を掃きます。パウダー状の塵や髪の毛もよくとれます。
ただし皮箒が新品のうちは穂先から茶色の樹脂粉が多少落ちますので、ひと手間必要です。新品の皮箒は外などで手ではたいて粉を落としてからご使用ください。当店の皮箒の場合は仕上げ段階で念入りに粉を除去しているので、通常3、4回掃き掃除をするうちに粉は気にならなくなるようです。
皮5玉手箒・特選(ヒノキ柄)画像「棕櫚皮箒(皮5玉手箒・特選)と原料の棕櫚皮画像」

【棕櫚の皮箒は原則修理をしないで壊れるまで使い切る棕櫚箒】
昔から皮箒は「室内用として傷んできたら外掃き用におろして使い、基本的に修理はしないで寿命が来るまで使い切る」ことを前提に作られています。もちろん使われている皮が新しいうちは、銅線や糸が切れたり柄竹が割れたら修理をしますが、通常は穂先の棕櫚皮自体を新しい皮に交換・差し替える修理はしません。その理由は、皮箒に使う棕櫚皮の耐久性にあります。

皮箒の原料の棕櫚皮の繊維は鬼毛箒に使う棕櫚繊維よりも細いので、皮箒の皮自体の寿命が数年〜上等な皮でも15年程といわれており(皮の品質や保管状況により大きく変わり20年以上もつ皮箒もあります。棕櫚皮そのものは蔵などで保管すれば50年以上でも保管できますが、皮箒は使用に伴う摩擦や紫外線・空気による酸化で劣化が進んでいきます)、皮が黒っぽい色(または白っぽい色)に変色したり皮の繊維が切れ毛のようになりバサバサしてきたら、使われている皮そのものの寿命=皮箒の寿命です。これを修理するには棕櫚皮はすべて、それ以外の部材も(もし柄に割れやヒビが見つかれば、柄も)大部分を新品に交換しないといけません。修理の結果が新品の皮箒とほぼ同じになってしまうため、余程の事情がない限りはそのような皮箒の修理はおこないません。
本鬼毛箒や鬼毛箒(タイシ箒)の場合は、原料繊維自体に数十年の耐久性があり、修理の際も穂先の棕櫚繊維はそのまま再利用できます。「棕櫚箒は壊れても修理して何十年も使える」と聞いたことがあるかもしれませんが、正確には「棕櫚箒の中でも鬼毛箒・本鬼毛箒」だけが修理して長く使い続けられる棕櫚箒です。皮箒と鬼毛箒・本鬼毛箒は使われている棕櫚原料の耐久性が大きく異なるので、鬼毛箒・本鬼毛箒は修理するけれど皮箒は原則修理しないのです。
皮箒の耐久年数は使われている皮の耐久性と使用状況・保管状況により大きく変わります。あまり質のよくない皮箒や過酷な状況で使われる皮箒は1年ももたない場合があるようですが、通常は5年前後、特別上質な皮箒は10年以上長持ちします。質の良い皮箒の中には20年以上使われているものもあります。当店の皮箒は品質「上(じょう)」「特選」の2種があり、「上」は5年〜8年、「特選」は10年〜13年前後の耐久年数を想定しています。

棕櫚箒の修理をしながら長く使いたいとお考えの場合は「本鬼毛箒」または「鬼毛箒(タイシ箒)」をお求めください。
皮箒について詳しくはこちらの別ページ「「皮箒」 - 棕櫚の樹皮をそのまま束ねた昔ながらの棕櫚箒 -」をご覧ください。

 

【本鬼毛箒・皮箒・他の和箒(ホウキモロコシの箒)の比較】

穂先長さの比較・棕櫚箒と和箒

「棕櫚箒を見たことがない」というお声も多いので、よく知られている他の和箒(ホウキモロコシの箒・他社製)との比較写真を掲載します。

棕櫚箒を含め和箒は、穂先の素材の特性を活かした作りになっていて、素材が棕櫚かホウキモロコシかの違いによって画像の通り、穂先の長さや厚み・掃き心地が異なる箒に仕上がっています。いずれも先人の知恵が活きた使いやすい箒です。

上質なホウキモロコシの箒は、本鬼毛箒よりも繊維が太くコシが強くて穂先にバネのような柔らかい弾力があり、掃きやすく丈夫で美しいです。

素材の耐久年数は、イネ科の一年草であるホウキモロコシより、木の皮である棕櫚の方が長持ちし、特に本鬼毛箒は最も耐久性があります。ホウキモロコシの箒の耐久年数は10年程といわれているものが多いようです。
経年劣化の仕方も素材によって異なり、ホウキモロコシは古くなって劣化すると穂がポキポキ折れやすくなり、皮箒は皮の変色や切れ毛・穂先がバサバサになって掃きにくくなり、本鬼毛箒や鬼毛箒(タイシ箒)は数十年経っても繊維がポキポキ折れることもなく穂先がすり減って少しずつ短くなっていきます。

比較写真1枚目は「穂先自体の長さの違い」を箒の横から撮影したものです。棕櫚箒は皮箒も本鬼毛箒も穂先の長さは同じで、ホウキモロコシの箒は素材全体の長さは棕櫚箒の2倍近くあり、穂先長さだけ比べても棕櫚箒の1.5倍程の長さがあります。これほど穂先長さが異なってもいずれも使いやすく、どちらかが短すぎるとか長すぎて掃きにくいということがないのは、穂先繊維のしなり方や、すり減り方が異なるためで、いずれも穂先素材を活かす最適な長さになっています。

穂先厚さの比較・棕櫚箒と和箒比較写真2枚目は「穂先の厚みの違い」が分かるように箒の底面から撮影したものです。

棕櫚箒と比べるとホウキモロコシの箒は薄い作りになっています。これも穂先繊維の特性を活かしたもので、ホウキモロコシは繊維が太くコシが強いので、この厚みがちょうど掃きやすいのだと思います。

ホウキモロコシと比較すると棕櫚の繊維は細く、棕櫚繊維の中で一番太い本鬼毛でもホウキモロコシと比べるとずいぶん細いです。もしホウキモロコシの箒と同じ厚みで棕櫚箒を作ったとすると、穂先にコシがなさすぎて掃き掃除には使えない頼りない箒になると思います。

棕櫚箒は、細い繊維をたっぷり使い毛束の密度を高くすることで掃きやすさを実現した箒だということが分かります。


穂先繊維の比較・棕櫚箒と和箒比較写真3枚目は「穂先繊維の太さや密度の違い」が分かるように穂先を拡大したものです。


左のホウキモロコシの繊維が一番太く、少し分かりにくいですが二番目に太いのが本鬼毛箒、一番細いのが右の皮箒の繊維です。

それぞれ穂先繊維の密度も異なっています。









 

2.棕櫚箒は畳・フローリングに適した室内用の座敷箒です。

 

本鬼毛箒・鬼毛箒(タイシ箒)・皮箒はいずれも畳やフローリングの掃除に適しています。
本鬼毛箒・鬼毛箒(タイシ箒)・皮箒のいずれも室内用として何年も使い古して掃きにくくなってきたら、土間や外用におろして再利用してください。

■昔から、特に「畳には鬼毛箒(本鬼毛箒)」といわれています

畳には鬼毛箒が最適といわれています昔から関西では「畳には鬼毛箒(本鬼毛箒)」といわれ、畳を掃くというお客様には必ず本鬼毛箒や鬼毛箒(タイシ箒)をおすすめします。

なぜ鬼毛箒(本鬼毛箒)が畳に最適とされてきたのか。

古くから、鬼毛箒を使い続けた畳は艶が出るといわれてきました。鬼毛箒は繊維の細さ・しなりが畳の目にちょうどフィットし、畳の目に沿って掃くことで効率よく掃き掃除が出来ます。
また棕櫚箒は畳表を傷つけることがありませんので、棕櫚箒での掃き掃除と雑巾がけの繰り返し、そして人が歩くことによって少しずつ畳が磨かれ、年月と共に畳に自然な飴色の光沢をもたらし、畳を美しく長持ちさせるといわれています。
 

■本鬼毛箒や鬼毛箒(タイシ箒)は、フローリングにも適しています

畳に用いた場合と同様の効果はフローリングにも期待できます。
無垢のフローリングを棕櫚箒で掃いた後に素足で歩くと、サラリとしていて気持ちがいいです。
 

■棕櫚「皮箒」も、畳にもフローリングにも適した箒です

棕櫚皮片手箒画像棕櫚皮箒は、鬼毛箒(タイシ箒)よりも繊維が細く、掃き心地が大変柔らかく、畳や床を撫でるようにしてゴミを掃き寄せます。パウダー状の埃も綿埃も髪の毛などもよく集めます。
昔から本鬼毛箒は高価でしたから、一般に広く普及していたのは皮箒の方です。
皮箒も、畳にもフローリングにも使われますが、「畳を磨く」効果は本鬼毛箒や鬼毛箒(タイシ箒)ほどはないとされ、耐久年数も半分程度か、粗い皮を使用した皮箒はそれ以下とされています。

また、皮箒にはご使用にあたって面倒な点があります。
新品の皮箒は穂先から多少の棕櫚粉がどうしても出ます。
新品の皮箒は、外や新聞紙の上などで、穂先を手で払うなどして、出てくる棕櫚粉を落としてから使用します。(当店の棕櫚皮箒の場合、念入りに粉を除去しておりますので、中には初回ご使用時から粉は気にならなかった、というお客様もいらっしゃいましたが、通常3、4回の掃除のうちに棕櫚粉のことは気にならなくなるようです)少しでも早く粉が出ないようにするためには、外や新聞紙の上などで皮箒の穂先を手で払うという作業を何度か繰り返してください。
 


3.棕櫚箒をサイズで分けると3種類「長柄箒・片手箒・小箒」

棕櫚箒3サイズ画像/長柄箒・片手箒・小箒棕櫚箒の大きさは3種類に分類されます。すべて室内用で、長柄箒と片手箒は畳・フローリング用の座敷箒です。

一番大きく長い箒は立ち姿勢で両手で持つ「長柄箒」
長柄箒の半分程の全長で、片手で持ち腰を少しかがめて使う「片手箒・手箒(短柄)」
片手箒よりも小さい箒は「荒神箒」または「小箒」「卓上箒」等とよびます。


もし一軒家で棕櫚箒を使うなら、この3種類を1本ずつ揃えれば、家の中の掃きそうじはほとんどカバーできるでしょう。小さな家やアパートなら、片手箒と荒神箒、または、7玉か9玉の長柄箒1本と荒神箒のいずれかの組み合わせで揃えれば充分です。

棕櫚箒がはじめて、など気軽に使ってみたい、というお客様には、まずは荒神箒をおすすめしています。長柄箒や片手箒もいいですが、日常生活で意外と重宝するのが荒神箒(小箒)です。家の中の何箇所か、埃の溜まりやすいポイントの近くや、いつも手の届く所に吊るしておくと、ちょっとした掃除に大変便利です。




4.棕櫚箒の名前・規格・サイズ「〇〇玉の棕櫚箒」とは

棕櫚箒の玉数例/本鬼毛9玉長柄箒画像耳馴じみのない言葉だと思いますが、棕櫚箒の名前とサイズ(横幅)は「玉数」で決まっています。
棕櫚箒の穂先は、小さな棕櫚箒(束)をいくつか並べた形をしていて、その小さな箒(束)それぞれを「玉」とよんでいます。穂先の「玉(=束)」の数が増えると箒の幅が広く、玉が少ないと箒の幅が狭くなります。

例えば、画像の棕櫚箒は穂先が9個の玉で出来ている本鬼毛箒ですので「本鬼毛9玉長柄箒」とよんでいます。

●長柄箒(幅の広いものから順に):11玉、9玉、7玉(皮箒は9玉・7玉のみ)
●片手箒・手箒:本鬼毛手箒は7玉※、皮手箒は5玉(それぞれの横幅はほぼ同サイズ)
●小箒・荒神箒・卓上箒(幅の広いものから順に):6玉、5玉、3玉、1玉

※誠に勝手ながら2017年以降は「本鬼毛手箒」は定番商品からはずしました。もし本鬼毛手箒をご依頼の際は大変お手数ですが「特注」として【棕櫚箒】特注の棕櫚箒(受注製作)ページからご相談ください。原料価格高騰と製作の手間や時間を考えますと、本鬼毛手箒1本あたりの価格があまりに高くなってしまうことと、昔は棕櫚手箒といえば皮手箒しかなく、ごく近年になって箒販売店などからの要望で鬼毛手箒が作られるようになったという経緯があります。片手箒には他に、掃きやすく扱いやすい皮手箒がありますし、本鬼毛手箒はどうしても価格を抑えることができませんので定番商品としてお勧めするのは一旦やめることにしました。)
また、上記以外の玉数の棕櫚箒も製作可能です。掲載していない玉数の棕櫚箒は、師匠の桑添勇雄さんが理由あって「どうも気に入らない。おすすめしたくない」と言っていた箒ですので、当店では定番商品からはずしています。もしご要望がありましたら製作させていただきますのでお問合せください。

 

5.棕櫚箒の魅力

私共の考える、また、お客様の声から抜粋した棕櫚箒の魅力です。

■見えるところに吊るしておいて、気軽にいつでも使える

近年、棕櫚箒は「シンプルな暮らしに合う掃除道具」として幅広い世代から支持を得ています。
掃除機もよいですが、箒で2、3分掃くだけでもずいぶん綺麗になるものです。
昔の人は箒で掃くことを「掃き清める」といいました。棕櫚箒は穢れを払い場を清める道具としても使われてきました。
棕櫚箒は置き場所をとらず、自然素材で、見た目が飾っておきたいくらい美しいので、いつでも手にとれる場所に吊るして置けます。掃除道具を組み立てたり取り出す手間がかからないので、いつでも気になった時に掃除ができます。
また、電気を使わず、騒々しいモーター音がないので、思い立ったら何時でも時間を気にせず掃除ができます。床材も傷つけません。
夜でも、赤ちゃんが寝ている合間でも静かに掃除が可能で、埃がたちにくいので誰かと会話しながらでも使えて、また電気のない場所や万一の停電時にも使えるので、掃除をしたくてもできないストレスがなくなって嬉しい、とのお声をいただいています。
 

■棕櫚箒は自然素材で、丈夫で長持ちし、掃きやすい

棕櫚箒は数百年の歴史があるといわれる日本の伝統的な箒で、和箒の中でも棕櫚箒、特に総本鬼毛箒は最も耐久年数が長く、丈夫で長持ちするといわれています。
また、使い心地が柔らかく穂先繊維に密度と厚みがあって掃きやすいというお声をたくさんいただいています。
棕櫚箒は静電気が発生しないので、箒穂先に絡まった埃や髪の毛は簡単に落とせます。
耐久年数は棕櫚箒の種類や品質、作り手の技術によって異なります。原料の棕櫚皮は硬さなど質や大きさが様々で、それぞれの棕櫚の種類に適した製品に加工されます。上質な棕櫚を用いて熟練の職人が製作した棕櫚箒は20年以上使えるほど丈夫といわれています。
 

■床材(畳やフローリング)にやさしい

棕櫚箒は床材が傷つかないので、長年棕櫚箒と雑巾での掃除を続けると、床材の自然な艶を引き出すといわれています。
 

■棕櫚箒を使うと気持ちがよい

お客様から「棕櫚箒を使うと嬉しい」「掃除が楽しくなった」「使うたびに気持ちがいい」など嬉しいお声をたくさんいただいています。
実際、棕櫚箒で掃き掃除をした畳やフローリングを素足で歩くと不思議とサラリとして心地がよいです。また手仕事の物を使うよろこびも魅力のひとつかもしれません。
 

■「棕櫚箒で掃くと埃が舞い上がりにくく、細かい埃もよく集まる」といわれています

「棕櫚箒で掃くと埃が舞い上がりにくく、細かい埃もよく集まる」といわれるのは、ホウキモロコシと比較して棕櫚繊維が細く、箒にした時、より密度のある細い繊維の束になるので、より細かい埃を集めることができるのだろうと考えられています。棕櫚箒を横から見ると穂先が広がってボリュームがたっぷりとある姿をしています。
ホウキモロコシの箒も掃きやすい優れた箒で、バネのような強いコシがあり、すみにたまった埃も力強く掻き出し、掃き出しもしやすいです。
棕櫚箒は繊維が細いぶん、ホウキモロコシのように弾力を生かした掃き方はできず、適度なコシで撫でるような掃き方をします。結果として、より静かな掃き方になりますので、比較すると埃が舞い上がりにくいといわれています。(現実には、人が動き箒を動かせば、まったく埃が舞い上がらない事はあり得ません。綿埃はフワフワと逃げてしまうこともあります。)

 

6.棕櫚箒の耐久年数

「棕櫚箒は何年くらい使えますか?」とお客様に聞かれて、師匠は「忘れるほど使えます」と答えていました。「忘れるほど」というのは、「いつ購入したか忘れるほど」「いつから家にあって、どれくらいの期間使っているのか忘れるほど」という意味です。

棕櫚箒は、畳・フローリング用の室内箒として何年も使い古して穂先が磨り減った後は、土間や庭を掃く箒として再利用され、箒としてだめになるまでとことん使われていました。

耐久年数については、お客様のご使用・保管状況により大きく異なりますし、箒の種類や作り手によっても変わり、はっきり何年とはいえないのですが、昔からいわれている年数を一応の目安としてご紹介します。(数値はあくまでも実際に使用されていた年数の一例で、平均値ではありません)

本鬼毛箒は、15年〜20年以上もつ(修理をすればそれ以上)といわれてきました。「本鬼毛箒は一生に3本あれば足りる」といわれていました。近年でも、35年間、畳で使われたという話があります。鬼毛箒(タイシ箒)は、15年〜20年程もつのではないかといわれています。以前、10年程前に作られた鬼毛箒(タイシ箒)の竹柄を差し替える修理をしましたが、穂先の棕櫚部分はほとんど傷んでいませんでした。

皮箒は、皮の品質と箒の作りによって大きく変わり、上質な箒は10年〜15年、並の箒は2年〜5年といわれていました。当店の皮箒にも「特選」と「上」の2つの品質の箒があり、使用する皮の品質・使用量・箒そのものの作りが異なりますので、耐久年数も異なります。9年程前に製作した皮手箒・上を今も使用しており穂先がそろそろ傷んできたな、と思っているところですので、当店の皮箒・品質「上」でも5〜8年以上は使えそうです。(品質「並」という皮箒は、皮目の粗く薄い皮を使用し、皮の使用量も少ない箒で、昔、工場や学校用に作られていたそうで、当店では製作していません)

棕櫚の皮や皮箒の耐久性については、上記【棕櫚の皮箒は原則修理をしないで壊れるまで使い切る棕櫚箒】に詳しく掲載しています。
 

7.当店の棕櫚箒に使用している、棕櫚以外の素材(柄・糸・銅線・鋲・釘・竹・藁など)について

■柄の素材は、黒竹またはヒノキから選んでいただけます

黒竹-和歌山県産画像 持ち手の柄の素材は、伝統的な和歌山県産の黒竹に加え、2012年から新たに国産ヒノキ材をご用意しました。それ以前に一部のお客様から熱烈なご要望をいただいておりました「洋間にしっくり収まる木柄の本格的な棕櫚箒」としてご提案いたします。
ヒノキ柄は、特に「無塗装のままで」とご要望がなければ、ガラス質塗装(艶なし透明)で仕上げており、木の色を生かし、自然な光沢で、手垢汚れや傷に強いので、黒竹柄と同じように掃除にどんどん使っていただけます。(ガラス質塗料は木の食器やお弁当箱などにも使われているものを採用しています。無機質で、揮発性有機化合物を使わず、防汚性、耐水性、不燃性に優れ、木の呼吸を妨げない塗料のひとつ。) ヒノキ柄(艶なしガラス質塗装後)画像

■糸は蝋引き麻糸、銅線はエナメル線を使用しています

当店で使用している糸は、昔ながらの天然糸使用の棕櫚箒を復活させたく、麻糸(蝋引き麻糸または麻糸)を採用しています。
師匠が初期に使用していた糸は、当時手に入りやすくて丈夫で美しいとされた蝋引き木綿糸なのですが、木綿糸では製作中に切れてしまうことが多く、より強い天然繊維として木綿糸の倍の耐久性とされる麻糸を採用しました(師は近年は蝋引き木綿糸が入手困難で、皮革用の丈夫なポリエステル糸や蝋引きしていない木綿糸を使用)。
当店の麻糸は蝋引き麻糸(黒褐色)と生成りの麻糸(リネン色/ラミー・リネン混紡糸)の2色を使用し、お好みにより使い分けています。蝋引き麻糸は蝋がたっぷり付いているので、蝋引きしていない同じ色の糸に比べ、濃く暗い色調で、黒褐色の糸は黒色に見えます。蝋引きならではの美しい光沢がありますが、ポリエステル糸に比べて、蝋の成分に棕櫚の樹脂粉がくっつきやすいです。

仕様変更:リネン色麻糸の糸材変更【リネン色麻糸の仕様・糸材を変更しました】 2019年4月からリネン色麻糸巻きに使用する糸材を変更しました。現在、商品画像は旧仕様(蝋引き麻糸・リネン色)のまま掲載していますが、実際はもう少し明るい生成り色の麻糸になります。商品画像は順次、新仕様に変更していきます。

銅線は、師匠が近年使っていたのと同じくエナメル線を使用しています。湿気に強く、経年変化が少ない銅線です。

■丸鋲、釘、竹、藁について

丸鋲と釘は、無垢の銅または真鍮製を使用しています。
鋲や釘は、箒がより丈夫で長持ちするよう補強する意味と同時に、装飾も兼ねており、師にならい必要最小限の使用につとめています。

竹については、柄の黒竹以外にも用いており、通常は見えませんが穂には、箒の玉(束)と柄をつらぬく竹串(コウガイ)が通っていて、自分で近隣の竹林から切り出したモウソウ竹をナタで割って削り用います。他に本鬼毛箒には竹製のクサビを数本打ち込んで補強しています。
 
藁については、外から見えない所に用いており、餅米の藁で、伝統的に鬼毛箒の玉(束)の芯にだけ、ごく少量用います。県内の農家さんや親戚から譲ってもらっています。鬼毛箒の玉の芯を棕櫚だけで作ると、縛った時に硬く締まりすぎて、竹串に刺さらなくなってしまいます。

余談ですが、当地方で「棕櫚座敷箒を水で丸洗いするのは厳禁」とされているのは、銅線(昔は鉄線)を錆びさせないためだけではなく、この鬼毛箒の芯に少量の藁が入っていることを知っているからです。藁を使った畳も芯まで濡れると駄目になってしまいますが、それと同じで、藁が濡れると完全に乾かすのが難しく、中で傷んで朽ちると毛束のゆるみの原因になる可能性があります。

 

8.棕櫚箒の製造工程 棕櫚箒ができるまで

製作風景-棕櫚箒製作舎工房 [製作風景の映像] PRO-DITIONAL NIPPON(プロディショナルニッポン)/ SONY
[21/47] 和歌山県 棕櫚箒 / 取材・撮影・編集:溝井誠 氏(2018.5.18)

[製作風景の映像] ANA機内上映番組「SKY EYE」〜空からのメッセージ〜和歌山編(2017.2) →現在非公開になっています(2021年4月現在)
「SKY EYE 〜空からのメッセージ〜 和歌山篇」(日本語バージョン) - ANAGlobalCH ( YouTube ) 
「SKY EYE - WAKAYAMA」(English/英語バージョン) - ANAGlobalCH ( YouTube ) 


箒師のしごと-棕櫚箒製作舎ブログその他にも、毎日どのような仕事をしているのか日々の製作風景をブログでご紹介しています(2017年〜)。
→箒師のしごと/棕櫚箒製作舎ブログ

 





9.番外編:現在の棕櫚箒を取り巻く状況について

ここ数年当店に寄せられるお声で、国内で販売されている棕櫚箒に関するご相談や苦情が急に増えています。現在の棕櫚箒の状況について取材を受ける機会があり、他社様のホームページになりますが、こちらのウェブマガジンで詳しく紹介してくださいましたのでご案内します。丁寧な取材、心より感謝いたします。
イツカギ |「自然体の暮らしに出会える」ライフスタイルマガジン / 棕櫚箒【後編】記事
なおこの記事の中で、ウェブマガジン掲載当時は「和歌山で小箒・荒神箒を除く伝統的な室内箒を作る職人は3人」となっていますが、2016年に1名(紀美野町のYさん)が他界されましたので現在は私を含め職人は2人(棕櫚箒製作舎と桑添勇雄商店の職人各1名)になっています。(※この文章掲載時:2019年現在)
 

【近年、棕櫚鬼毛箒や皮箒で増えている修理のご相談】

ここ数年、他社製の棕櫚箒ですが購入後1年もたたずに壊れたという修理・買い替えのご相談をいただくようになりました。
棕櫚箒を数千本・数万本と量産するには分業・流れ作業で大量生産します。
量産型の鬼毛箒(=タイシ箒)や皮箒は数年前まで和歌山でも細々と作られていましたが、職人が高齢となり廃業し、現在では国内でよく見かける棕櫚箒のほとんどは中国製です(「中国一次加工」を含む。例えば中国製の棕櫚箒を日本で縛りなおす・多少手を加えるなど日本国内で何らかの最終加工をされた棕櫚箒は、その性能や製造工程はともかくとして「日本製」「国産」「中国一次加工」棕櫚箒などの表示で流通しているのが実情のようです。また近年は、生産地の表記が分かりにくい箒、例えば「Made in PRC」※と記載の棕櫚箒や、そもそも販売者名のみで製造地の表示がない棕櫚箒も多く見かけます。※「Made in PRC」=「Made in China=中国産」と同じ意味で、PRCは「People's Republic of China=中華人民共和国」の略語。いつ頃から「Made in PRC」という言葉が、製品の原産地表示に使われるようになったのかは、よく分かりませんでした)。
江戸時代以降の長年に渡り師匠はもちろん多くの先輩職人が産地の信用を高め守るべく、50年余り前に輸入棕櫚材に頼らざるを得ない状況になってからも、品質第一に誇りをもって棕櫚箒作りに取り組んだ結果、和歌山県野上谷地方の棕櫚箒の評価が高まり今日まで来られたことを思いますと、私は移住者ではありますがこの地に在住の箒職人として、現在このような状況となっておりますことは、棕櫚箒をご検討中・ご愛用のお客様に対し誠に申し訳なく残念で、非常に危うい状況だと感じています。

昭和中頃以降には商品を海外で安く大量生産し輸入して大量に売買しようという風潮があり、当時の棕櫚箒も例外ではなく、和歌山の職人の指導の元に中国での棕櫚箒生産がはじまり今も続いています。
品質については中国製の棕櫚箒にも上質の棕櫚が使われている場合があり、必ずしも棕櫚自体の質が悪い訳ではなく、日本の熟練職人が製作した棕櫚箒と比較すると総合的な製作技術の問題で早期に壊れたり掃きにくい箒が多いのではないかと思います。
棕櫚箒は分業制の大量生産では細部まで正確に作ることができません。また海外製品の場合、見た目は似せて作られていますが、和歌山の伝統的な棕櫚箒とは特に見えないところ・肝心なところ(作りや素材の使い方等)が異なっており、海外で大量生産するために製法が簡略化されてしまったか、正確な技術が伝わっていない可能性が高いです。
このような箒の多くは修理できませんので(長持ちする箒にするためには、棕櫚原料や構造から根本的に作り替える必要があるため)ご購入の際はよくご検討いただければと思います。



「鬼毛箒」鬼毛箒・本鬼毛箒・総本鬼毛箒の違い 「皮箒」棕櫚の樹皮をそのまま束ねた昔ながらの棕櫚箒 棕櫚箒製作舎と箒について